音楽は音楽家/アーティストの渋谷慶一郎さん、台本は演出家/演劇作家のチェルフィッチュの岡田利規さん、その他にもYKBXさんとかevalaさんとかOMAの重松象平さんとかが参加してつくられているオペラとなれば、もう日本の先端が集まって作られた作品だし、観に行かないと。と思い先行予約でチケットを購入し、さらにチケット購入後にSumallyでの当選でルイヴィトンによる特別公演も観れることになって計2回楽しんできました。
ここで2回観れたということがホントによかったと観てからわかりました。
ストーリーとしては、キャラクターの初音ミクが自分の死について考えるというもので、自分は死なない存在のはずだが実は死ぬ存在であり、人間が完全で私は不完全なの?それとも人間が不完全で私が完全なの?という狭間で死というものに奥深く入っていき「終わりはいくつある?」というように、寝ていることと死んでいることとの違いの様な話になっていくのですが、全てのストーリーを簡単に理解できるようにはなっていなくて様々な取り方ができるようなテキストが続き、僕には理解できたという自信がないです。
音楽に関しても初音ミクの音声が前に出て歌詞が聴き取りやすいというようなROCK的な音楽としての音楽ではなく、初音ミクの声も含めてビート/ノイズ/シンセ等のサウンドが縦横無尽に360°のサラウンドで迫ってくる様な、渋谷さん × evalaさんというサウンドでした。電子音楽が圧倒的な情報量で迫ってきて、周波数も下から上までかなりクリアに聴こえるようなサウンドシステムをオーチャードホールの規模入れていて、何回か低音でホール自体が揺れているのを感じるほどでした。情報量が多くスゴい数の音が出ていたので、バンドとかであればこれがドラムでこれがベースでこれがギターでというようにそれぞれのフレーズを追えたりするのですが、そういう状態ではなく音楽として音としてしか捉えられなかったです。
恐らくこういう周波数や情報量ということも含めての音楽としての部分を上手く利用して作曲していると思うのですが、これを意識的にやられて情報を操作しているという部分がスゴいです。また、終わり3曲くらいになると音がさらに迫ってくるように構成されていて、単に音も大きくなっているとか音数が多くなるとか周波数がより下から上まででているのかもしれませんが、音だけでも感動的になるようなストーリーが構成されていました。
ビジュアル面に関してはアニメ等をいっぱいみているので、絵という面ではすごく驚くことはなかったのですが、スクリーンの配置と映し出されている映像が高解像度で3D(?)で投影されているのでそこにある物質感があったし、複数のスクリーンを空間の使い方や展開の仕方がスゴく面白かったです。パンフレットにも書いてあったのですが、渋谷さんがステージ上にいたことで初音ミクの物質としての存在感が増していたようにも思えました。しかし、途中の龍のようになる時の形状があまり好きでなかったなぁ。まあそれは好みですが。音楽やテキストと違ってこういう好みがビジュアル面からは出てきやすいのかな?と思いましたが、それを抜きにしてもビジュアルは理解しやすくてよかったです。
初音ミクに萌え感が無くて、これが結構良くていろんな人が入りやすい入り口を作っているような気がしました。あと最後の方にそのビジュアルを完全に断絶するかのように光がステージを満たして、舞台美術が動くのですが、ええぇ!?ってものすごい驚きがありました。
これだけの強度のある情報がスゴい勢いで入ってくるので観ながら理解するのが追いつかない。映像と表示されているテキストを中心にしてストーリーと音楽を追っていくのですがドンドン溢れて落ちていってしまっているのがわかるほどでした。1回目観た時は、強い勢いで水を入れたコップの様に自分の脳の許容量よりも少ない情報しか残っていないんじゃないか?というほどの圧倒的な体験でした。もはや頭で理解できないので体験としか言いようがないという状態で終わってしまったという感じでした。2回目を観た時はストーリを覚えたせいか、サラウンドの状況が変わったからか初音ミクの声が聴きやすくなっていてストーリーや音楽を楽しみながら追うことができました。ストーリーの内容やサウンドがどうのこうのを分離してメディアアートとして捉えてもそれだけで体験する価値があるものでものスゴく刺激的で素晴らしいのですが、2回観たことでなんとか少しだけ考えられるだけの情報を手にできて僕が思ったことは、これは死/終わりをテーマにして「愛がなければ生きていけないが、それは永遠ではない」というものすごくシンプルでストレートな内容を伝えるオペラなんじゃないかな?ということでした。
僕は他のオペラをしっかり観たことも聴いたこともがないので、想像を出ない部分があるのですが、こういう死/終わりをテーマにして「愛がなければ生きていけないが、それは永遠ではない」ということを伝えるというようなシンプルでヒット曲のようなテーマこそが非常にオペラなんじゃないかな?って思いました。それを単純にやるのでなく様々な角度から複数の難解なレイヤーでおこなわれているので、ヒット曲のように丁寧に一つの解にたどり着くようになっていないと思いますが、全てはそこに行き着くように思えました。それだけ関わってきた人達の愛のような熱のようなものを感じました。
ちなみに僕は音楽とかが好きでそこを感じる比重が多かったせいか、泣いてしまったというベクトルに入ることなく2回観ても圧倒されてしまったという結果になりました。終わりはいくつある?と言っていたようにそれぞれがこのTHE ENDの終わりを決めていいような気がします。考えても答えが出ないように作られているんだと思います。(僕はそこまで読み解けなかったですが。)ものすごかった、圧倒的だったとか、感動したとか、泣いてしまったとかがTwitterの僕のタイムラインでは多かったんですが、情報量の多さについていけず脳がオーバーフローして寝てしまった人とかもいるだろうし、複雑すぎて難解だと思って面白くなかったとか、批判したりする人もいるかなと思います。それでこそ、この作品のすごさであり、健全な状態なんじゃないかと思います。本当に2回観れてよかったです。2回みなければたどり着けない部分がある作品なんて本当に久々でした。さらに言えば、2回でも足りていないと思います。時間を置いて少し整理ができてきたのですが、とにかく機会があればまたみたい作品です。
ロビーにあった初音ミクの等身大フィギュア。かなりいい感じでした。
MOVIE
PHOTO
これもロビーにあったTHE ENDのflipdot(っていうのかな?)の作品。
BOOK
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